一点ものの美術品。海外輸送時の破損リスクをいかに減らすかが課題でした

2021 7/29
一点ものの美術品。海外輸送時の破損リスクをいかに減らすかが課題でした
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お答えいただいたのは…
株式会社毎日オークション 業務課 和田俊介課長

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美術品に特化した日本最大級のライブ型オークションを手掛ける株式会社毎日オークション。取り扱っている作品は幅広く、「絵画・版画・彫刻」「西洋装飾美術」「ジュエリー&ウォッチ」「新作工芸・古美術・茶道具」「ワイン」と5つのジャンルに分けられます。
今回は、落札された美術品の輸送手配を行う業務課の和田俊介課長に、美術品の海外輸送で起きたトラブルと解決策をお伺いしました。

目次

丁寧に計画する美術品の輸送

業務課の和田俊介課長。業務課の仕事は落札された美術品の輸送だけでなく下見会の作品展示準備など多岐にわたる

美術品はほとんどが一点もので形状もさまざま。輸送で苦労されていることも多いのでは?

物流に関しては、ひとつの美術品に対して、毎回ベストな方法を模索しています。それぞれの作品の状態、形状、素材を考慮し、安全かつ安価で最良の輸送をお客様にご案内できるように心がけています

海外輸送の場合には、輸送会社にて作品を集荷後、国内通関、航空便または海上便で輸送、現地国到着後の通関、現地ローカル配送とさまざまな工程を伴うため、梱包状態や輸送方法を一つひとつ丁寧に吟味する必要がございます。

弊社の所在地である有明近辺には、美術品専門の輸送会社さんや梱包業者さんが多くあり、担当者と直接顔を合わせて相談をしたうえで、見積もりを出します。その見積もりにお客様がご納得していただき、作品の代金や手数料、送料、保険料などをご入金いただいた後にはじめて落札品を送るという流れです。

梱包のサイズによって梱包料も送料も変わってくるので、お客様からはよく「もっと小さくなりませんか?」と言われますね。梱包サイズを変えたとしても作品の安全を担保するために、何ができるか。アイディアの出し合いです。

海外輸送の課題

海外に発送する場合、美術品で高額なものは、貴重品輸送といって、飛行機の中で丁重に扱っていただく輸送方法があります。けれど予算感に見合わず、お客様のご希望に応じて国際宅配便のクーリエ便を利用することが多いです。たとえばクーリエ便だと10万円程度の輸送費が、貴重品輸送では30万円以上になってしまうこともあります。落札品の中には数万円、数十万円のものもありますから、貴重品輸送だとお客様が輸送費で想定されているご予算に合わないことが多いんです。。

ただ、クーリエ便の場合は一般貨物の物量も非常に多く、ときには貨物の破損などのリスクを伴うこともあります。いかにして、沢山取り扱われる貨物の中で、弊社で引き渡した貨物をより丁重な扱いで対応してもらえるか、いつも頭を悩ませていました。

クーリエ便…国際宅配便。航空便で海外に書類や小口荷物を届ける民間の配達サービスで、発送元から受取先まで、通関手続きを含めたDoor to Doorの一貫輸送を行う。代表的な企業としてFedEx(フェデックス)、DHL(ディーエイチエル)、UPS(ユーピーエス)などがある。

クーリエ便を利用した際に起きたトラブルとは?

海外のお客様へブロンズ像を送った際に、ブロンズ像の一部が破損してしまったことがありました。往復の輸送費用等のマイナスが発生し、なおかつ、そのやりとりにもかなり時間がかかってしまいました。

ブロンズ像が破損するのは、かなり珍しいことです。しかも、この輸送のときは、お客様とも事前に相談し、美術専門の業者による木箱梱包をしたうえで輸送させていただいたものでした。

美術品の梱包方法は、主に3つ。段ボールで外箱を作る「カートン梱包」、それからトライオールという強化ダンボールを使った「トライオール梱包」。そして最上級が写真の「木箱梱包」だ。「FRAGILE」と注意書きがされているがクーリエ便では輸送中に倒されてしまう恐れも

輸送中にどのようにハンドリングされてしまったのかはわかりませんが、木箱がひっくり返されてしまったとか、積み込みすぎて倒れてしまったとか、おそらく何かそういう外的な要因があって、中のブロンズ像の一部が欠けてしまったのかと思います。

破損してしまった場合の責任は、どこが負うのですか?

本来であれば、クーリエ便の会社さんにも負担していただきたいところですが、それが判断つかない場合は、外航保険を適用して作品代金を補償します。ただ、保険を適用するためには破損した作品を保険会社に提出しなければいけないため、「届いた箱にもう一度戻してください」とお願いして日本への輸送の集荷依頼を手配します。そういったやり取りは非常にデリケートなので、時間もかかります。

金額的な負担だけでなく、お客様のお気持ちやスタッフの労力を考えると、貨物の量が多いクーリエ便を利用するうえで、いかに破損リスクを減らしていくかが課題でした。

ショックウォッチやティルトウォッチを利用してみて

貼るだけで簡単に注意喚起ができるショックウォッチ。同社で検証を重ね、現在、使用しているのは少し敏感なL-55

ショックウォッチやティルトウォッチを実際に使用してみて、事故は減りましたか?

本当に驚きましたが、年に数回程度発生していた海外輸送事故がなくなりました。輸送会社に対して「梱包の中身が壊れやすいもの、繊細なものなので丁重に扱わないといけない」という危機意識を高めてもらうために、非常に効果的だなと思いますね。

実際に赤変してしまったこともあります。そうすると輸送のステータスが止まってしまうんですね。そこで、こちらから「どうしたんですか?」と輸送会社に連絡したり、輸送会社から「赤くしちゃったんですけど、どうしましょう。輸送を続けてもいいですか?」と連絡があったりします。

その場合には、荷物が届く前にお客様に連絡をして「輸送中にショックウォッチに反応が見られ、貨物に何かあった可能性があります。お手元に届いた後、なるべく早く開けていただくことはできますか?」とお伝えすることができます。そうするとお客様も心構えができるので、クレームに繋がらなくなりますし、責任が輸送会社にあることも明確になります。

その一報を事前にできることは、僕らの会社を守っていることでもありますし、お客様に対してひとつ上のサービスを提供できているという実感があります。

ショックウォッチを貼って、クーリエ便の会社さんからの反応は?

急に貨物にショックウォッチを貼っておくと、ビックリされてしまうと思ったので、事前にクーリエ便の各社ご担当者の方々には相談をし、「輸送中のリスクを減らすための工夫としてこちらを取り入れたいのですが」と説明したところ、各社ご担当者の方には「コロナ禍で貨物の物量も増えている中、想定外のことが起きてしまうケースもあったので、このような個別の対応も必要だと思います」とおっしゃってくださいました。

輸送品質向上において今後どのようなことに気を使っていきたいですか?

この間、先のブロンズ像を買っていただいたお客様に、再びブロンズ像を買っていただいたんですよ。そこで、「輸送品質.COM」で売られているインスタパックを利用することにしました。

作品を安全にお客様のお手元にお送りするため、作品一点一点の特性を見極めること。そして最適な梱包方法、輸送方法をご提案することを継続しつつ、インスタパックのように新しい方法も積極的に取り入れていきたいと考えています。

使用商品

株式会社毎日オークションとは?

美術品国内最大級の取り扱い点数を誇るライブ型オークション会社 

ライブ型オークションとは?

オークションといえば、日本では個人間で簡単に取引きができるネットオークションがメジャーだ。一方、毎日オークションは、東京都・有明にある会場で競りを行う。世界的に有名なサザビーズやクリスティーズといった欧米大手オークション会社と全く同じ業態で運営されている。

 

同社ではオークションを年間30回以上開催しており、価格帯は数万円から数億円まで、一開催につき平均1,200点もの美術作品を扱っているという。

「オークション会社の中には現代アートや西洋骨董、宝飾品等、何かのジャンルに特化した形でオークションを運営している会社も多いのですが、逆にうちは美術品といわれるものならなんでも扱っていることが特長です。幅広い商材を扱わせていただくことで、オークションを活用した美術品の売買の可能性をさらに広げていけたらと思っています」(和田俊介課長)

毎日オークションのカタログ
3ヶ月の時間をかけて丁寧に作られるカタログを見ているだけでも楽しい。カタログに書かれている予想落札価格をもとに自分の希望入札額を決められる

気軽に参加できるオークションハウス

オークション開催前に開かれる下見会の様子。美術品を購入する際には、間近でみたり手に取ってみたりして、実物を確かめることが重要だ。いわば“触れられる美術館”といったところ

「ハリウッド女優が着けたジュエリーが〇億円で落札された」「有名社長が〇億円の絵画を落札した」などというニュースをよく耳にするが、同社のオークションはプロやコレクターだけのものではない。会社員の方や家族連れで参加する人もいるという。

「たとえば、SNSでうちのオークションがあることをお知りになられた方が『参加したいんですけど』とふらっと来られることもあります。身分証を見せていただき簡単な参加申込書にサインいただくだけで、予約も参加料も必要ありません(※現在は感染防止対策のため、参加予約制となっています)。オークションで落札できたときだけ、買っていただいたハンマープライスに対する手数料と消費税が発生する仕組みです」

コロナ禍で新たに誕生したライブビット

競りに参加するには、会場に来場するほか、書面やホームページから競りの前に入札する方法、スタッフが電話を繋げながら競りに参加する電話入札という方法がある。電話入札は英語や中国語などの外国語を話せるスタッフが対応するので、海外からの利用も多い。

「コロナ禍でご来場が難しい方が増えたので、ライブビットという新しい入札方法を増やしました。こちらはオンラインでクリックするだけ、リアルタイムで競りに参加できます。競り前に入札金額を決める方法とは違って、自分の意向をダイレクトに伝えられる電話入札やライブビットという参加の仕方を選ばれる方が多いですね」

海外はもちろん、遠方に住んでいて会場に足を運べないという人にも便利なライブビット。オークションの臨場感を自宅で楽しんでみてはいかがだろうか。