まるでルンバのように扱いやすい! 次世代フォークリフトで日本の物流が変わる!?

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まるでルンバのように扱いやすい! 次世代フォークリフトで日本の物流が変わる!?
無人フォークリフトGulf
公開日:2022年06月21日

少子高齢化による労働人口の減少、そして、ネット通販の需要拡大に伴い、慢性的な人手不足に陥っている物流業界。日本の物流の未来において、期待したいのがロボットだ。倉庫内のピッキングや搬送などで、自動化を検討している企業も増えている。

そこで今回は、最新の無人フォークリフト事情をご紹介!

目次

「無人搬送車」AGVと「自律走行搬送ロボット」AMRの違いとは?

無人フォークリフト市場において、いま日本で主流なのがAGV。「Automatic Guided Vehicle」の略称で、日本語では「無人搬送車」と呼ばれている。

開発は1980年代と古く、多くの企業が導入しており、ロボット自体の信頼性は高い。ただ、AGVの場合、磁気テープやQRコードを倉庫内の地面に貼りつけ、それをガイドにしてロボットを走らせるという方式となる。やっかいなのが、庫内のレイアウトが変わると、磁気テープを張り直さなければならないこと。また、人やフォークが磁気テープの上を通ると自然に剥がれてきてしまうため、貼り直さなければならないというデメリットがある。

それを解消するべく、誕生したのがAMRだ。「Autonomous Mobile Robot」の略称で、日本語では「自律走行搬送ロボット」と訳されている。

AGVがモノを移動させる手段であるのに対し、AMRは「人と共存する」というコンセプトで開発されたロボット。

磁気テープといったガイドを必要とせずに、どのようにロボットを走らせるのかというと、ロボット自体が倉庫内の環境と自己位置を認識し、目的地までの最短距離を自動で算出して移動既存の設備を改造することなく導入できるのが、AGVとの大きな違いのひとつだ。また、もし途中に障害物があったとしても、自ら回避・停止する。まさに、最新型のスマートロボットだ。

 

新進気鋭のAMRロボット『スマートフォークリフトGulf』がすごい

テクトレ長澤さん&鎌田さん

テクトレ株式会社 長澤草太さん(左)、鎌田友里恵さん(右)
中央がスマートフォークリフト『Gulf』

今回は、テクトレ株式会社様の倉庫にお邪魔し、AMR(自律走行搬送ロボット)の『スマートフォークリフト Gulf-1400-CDD(以下Gulf)』を実際に見せていただいた。

無人フォークリフト『Gulf』はスタンダードロボット社というAMRに特化した中国のメーカーが開発したロボット。日本総代理店であるテクトレでは、現在あらゆるジャンルの物流・メーカー企業から、連日デモの依頼が絶えないというから、期待度の高さが伺える。

GulfをPCで操作する様子

Google chrome上で『Gulf』のタスクを組むセールスコンサルタントの長澤さん。小学生でも操作できるというほど、設定が簡単

まず、『Gulf』を動かすには、倉庫内の環境把握・マッピングから。『Gulf』の電源を入れて、Wi-FiをPCやタブレット、スマホとつなげば、なんとGoogle chrome上で操作する。余計なソフトが必要ないから、機械オンチの筆者でも、簡単に操作ができる。

倉庫内のマッピングは、30平米くらいの場所なら、ものの5分で完了!

そして、「ここで止まる」「ここでパレットを持ち上げる」「ここでパレットを降ろす」といったタスクをPC上で組み、点と線をつなぎ、タスクを組んでいく。

マッピング画面

黒線が実際にロボット本体がマッピングした図面。赤線のタスクを青線でつなぎ合わせ、ロボットの動きを組む。
環境対応能力に優れているから、レイアウトが変わりやすい物流倉庫内に最適

 

 

長澤さん
「たとえば現場に午前中に納品したとしても、マッピングをしてタスクを組んで、夕方には現地の方が実際に動かすことができます。それくらい扱いがとても簡単なんです。また、もし倉庫内の環境が変わったとしても、再度マッピングをし直して、行先の変更やタスクの変更も、その場で誰でも行えます。融通が利くというところが、AMRならではの特長で、いま注目されている理由なのかなと思います」

導入する際には、システムの構築までテクトレのコンサルタントがお手伝いしてくれる。もちろん、その後のサポートも可能だが、『Gulf』は言うなれば、「ルンバ」のフォークリフト版のようなもの。誰でも簡単に操作できるから、現場の人が自分たちでタスクを変更したり、改めて倉庫環境が変わったときにマッピングをしたり、臨機応変に動かせるのが魅力だ。

「無人フォークリフトは遅い」は誤解?

ところで、無人フォークリフトで多くの人が持っているマイナスイメージは、「人の作業よりも遅い」というところではないだろうか。

 

Gulf正面

可搬重量1.4トン、上下移動距離1600mm、
本体重量はわずか700kg、360°回転可能、停止誤差±10㎜。外部センサーを使用することで停止誤差を±2㎜まで矯正可能


長澤さん
「『Gulf』の走行速度は秒速1.67m/s、時速にすると6.01km/hまで出すことができます。確かに人が運転するフォークリフトよりも少し遅くなるのですが、実際に走っているのを見ると意外と早いと感じると思います。ただ、最高速度で走らせる現場はめったになく、安全性を考慮して、無人フォークリフトはかなり遅く設定されます。大きい企業さんほど、ルールが厳しい傾向にあり、秒速0.1m/s、時速にすると0.36km/hで設定されているところもあるくらいです」

鎌田さん
「『Gulf』には360°全方向検知できるよう複数の障害物回避レーダーがついており、前方に人や障害物があれば、自動で停止します。それでもやはり、まだ日本に入ってきたばかりのロボットなので、どの企業さんも安全性というところを重視して速度を遅めに設定されていますね」

つまり、安全性を保つために、あえて導入する企業側が遅くしているだけであって、無人フォークリフトが特段遅すぎるということはなく、「スピードは出せるけど、あえて出さない」という選択をしているだけなのだ。

参考までに、人が運転するフォークリフトを使用する倉庫内では、労働災害防止のために、現場ごとに構内速度制限が設けられているのだが、建屋内の場合、安全性を考慮して5km/hから10km/h程度に設定されている。一般のフォークリフトとも、十分共存できるのではないだろうか。

これほどまでに多機能で魅力的な『Gulf』。あえてコンサルタントに欠点を聞いてみた。

長澤さん
「『Gulf』はコンパクトなんですが、重心を支えるために、足が2枚重ねになっているんです。そのため、両面に板がついているいわゆる田の字型パレットが使えません。使用できるのは、片側のみのスキッド(下駄パレット)となります。ただ、もうひとつ本体サイズの大きいGulf-1000-CPDでしたら、どちらのパレットも使用できますよ」

oasis1

こちらは『Gulf』と同じ仕組みで動く
スタンダードロボット社の搬送ロボット『Oasis』

oasis2

コンパクトな『Oasis』は、障害物を検知すると自ら迂回し、
最短距離でタスクをこなす

AMRのコンセプト通り、『Gulf』は「人と共存できる」ロボット。近い将来、人が運転するフォークリフトがなくなる現場も出てくるかもしれない。

<text/ひろの>
テクトレロゴ

<取材協力先>
テクトレ株式会社
2020年設立。工業用自動搬送ロボットの輸入販売をはじめ、物流現場の自動化をサポートするシステムの開発、製造現場の自動化トータルソリューションの提案などを行う。飲食店やオフィス、ホテルの自動配送ロボット、業務用自動掃除ロボットといったサービスロボットも取り扱う。
公式サイトはコチラ

\もうすぐ開催!こちらでスマートロボットGulfと出会えます

出展情報
●『第3回 関西物流展』 2022年6月22日(水)~24日(金)
Ground株式会社ブースにて出展。自動運転フォークリフトGULF1400、Gulf1500によるトラックへのパレット自動積み込み自動卸しを実演。
『第3回 関西物流展』公式サイト

●『ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2022』2022年6月30日(木)~7月2日(土)
中央工機株式会社ブース、テクトレ株式会社自社ブースにて出展。GULF1400をはじめとした複数社のサービスロボットを展示。
『ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2022』公式サイト